「saxophone」カテゴリーアーカイブ

「Ornette Coleman – Free Jazz +1 [Atlantic] 1960」は難解じゃなかった

「オーネット・コールマン(Ornette Coleman)」の作品群を聞く際、どうしても「フリージャズ=訳分かんない」という先入観念から、なかなか「気軽に聴く気になれない」んですが・・・。

Ornette Coleman - Free Jazz +1 [Atlantic LP 1364] (1960)

覚悟を決めて(笑)聴いて見ると、案外ふつーに聴けたのがこの、1960年に録音された「Free Jazz (Atlantic LP 1364)」。

クラッシック(現代音楽)から、フリージャズに入った方がより、理解し易いみたいですが、残念ながら私は、現代音楽には興味がなくて、詳細語れません、あしからず(笑)。

コード進行やテーマの小節数、リズムパターンなどを廃し、滅茶苦茶やってるだけ(笑)かと思えば、ベースのスコット・ラファロなど、クラッシックの素養があるミュージシャンが、荒れ狂う音の洪水を、ギリギリの処で、「音楽の枠内」に踏みとどめているような感じ。

溢れる音の洪水に呑まれぬよう、各人が「尖がった音の塊」を投げつけていく、といった風にも思えます。

なお後にオーネット・コールマンは、この演奏方法を「ハーモロディクス(Harmolodics)理論」と名付け、
「俺達は無茶苦茶やってるじゃないもん!法則性に基づいてやってるんだ!」
と、開き直りますが、パ●ト・メ●ニーら勘違い(と言われている)組を含め、理解出来るものはごく少数だった模様(笑)。

さてこのアルバム、「Free Jazz – A Collective Improvisation By The Ornette Coleman Double Quartet」とジャケットに記載されてますように、左右のチャンネルに別々のカルテットを配し、コードや小節数の制約がない状態で延々(約37分)、即興演奏を繰り広げます。

この録音に関しては、あらかじめ決められていたのは、「ソロの順番」と「演奏時間」だった模様。

レコード時代には、AB両面で1曲という凄い事になってたようで。

CD時代に1曲につながった演奏を聴く事が出来るようになりましたが、これはこれで、別の問題が発生してたりします。

つまり、人間の集中力の持続時間という問題がありまして、これが約45分(15分×3回)。

良い音で聴けるLPレコードの収録時間が約20分という話もありますが、人が「集中して聴ける持続時間」という点でも、合致してる訳でありますね。

さて、アルバム「Free Jazz +1 [Atlantic] 」の話に戻ります。

派手なテーマらしきものが演奏された後、いきなりドロフィーのソロが始まります。
なお、各人のソロが終る頃、合奏(テーマ)らしきものが挟まれます。

ソロの間、他の奏者がナニをしてるかというと、適度に合いの手を入れてる感じ。

演奏はまず「エリック・ドルフィー(bass-cl)」が約5分ほど演奏し、次に「フレディ・ハバード(tp)」 が約5分ほど演奏。

次に「オーネット・コールマン(as) の演奏が10分弱ほど続き、LPレコード時代には、ここでA面(Part 1)終りとなる模様。

ここまで息つく暇もないまま、経過時間約20分(笑)。

LPレコード時代のB面(Part 2)、まずは「ドン・チェリー(pocket-tp)」の演奏が約5分。

フロント陣が終るとリズム隊でまず、ベースの「チャーリー・ヘイデン(b)」のソロが約4分 で、「スコット・ラファロ(b)」 ソロが約4分。

最後にドラムの「エド・ブラックウェル(ds)」が約1分、「ビリー・ヒギンズ(ds) 」が約1分ソロを演奏。

CD時代に追加された「The First Take」という曲は「Free Jazz (alternate take)」であり、リハーサル的に約17分というコンパクトな時間で、「Free Jazz」が演奏されております。


なおジャケットの窓から見える絵画は、抽象表現主義の代表的な画家・ジャクソン・ポロック(Jackson Pollock)の「ホワイト・ライト(White Light) (1954)」という作品。

この作品は現在、ニューヨーク近代美術館(MoMA)に収蔵されているそうです。


Ornette Coleman – Free Jazz +1 [Atlantic LP 1364] (1960)

01. Free Jazz (Ornette Coleman) 37:03

[CD bonus track]
02. The First Take [Free Jazz (alternate take)] (Ornette Coleman) 17:00

A Collective Improvisation By The Ornette Coleman Double Quartet

Ornette Coleman (as) Don Cherry (pocket-tp)
Scott LaFaro (b) Billy Higgins (ds) [left channel]

Eric Dolphy (bass-cl) Freddie Hubbard (tp)
Charlie Haden (b) Ed Blackwell (ds) [right channel]

December 21, 1960 at A&R Studios in NYC.

Supervised by Nesuhi Ertegun
Painting – Jackson Pollock
Album Design – Loring Eutemey
Recording Engineer – Tom Dowd

ヨレ気味だからこそ聴きやすい遺作「John Coltrane – Expression (1967)」

肝臓癌由来の痛みをこらえつつ演奏を録音し、発売の手配を続けた「Expression」は、ヨレ気味な演奏ゆえ、過激な部分がナリを潜め、聴きやすくなったのは皮肉な話ですな。

ラヴィ・シャンカールが説く「静寂」と「安らぎ」が具現化したようなアルバムです。

John Coltrane - Expression

<突然の容態悪化、そして昇天>

1967年7月15日(土)まで、妻や親族、音楽仲間にさえ容態の悪化を覚られないまま、具合の悪い状態でコルトレーンは活動を続けていたそうです。

自宅の地下室のスタジオを作り、最新録音機材まで揃え、何故、何事もないように活動を継続するそぶりを見せていたのか・・・。

前兆として、1967年 5月に内臓の激痛により倒れていたそうですが・・・。

そして、コルトレーン生涯最後、日曜日の朝を迎えます。

1967年7月16日(日)、日曜日の朝。食事が取れないほど衰弱したため、ハンティントン病院に救急患者として入院。

そして翌日7月17日(月)午前4時、肝臓癌により昇天(死去)。

音楽仲間、そして公民権運動のシンボルとして見ていたアフリカ系アメリカ人達に、突然の喪失感と、衝撃が走ります・・・。

<遺作「Expression (impulse! A-9120)」>

今回ご紹介する「Expression」は、1967年冬から春にかけて録音された作品。
ジョン・コルトレーンのスタジオ録音・最終作(遺作)であり、「平和と愛」を探求するかの如く、スピリチュアルな演奏であります。

タイトルの「Expression」は、日本語では
「(気持ち・性格などの)表われ、しるし」という意味だそうで。

ここ最近のブログ記事で延々書いている通り、ジョン・コルトレーン(John Coltrane)が残した作品群のうち、最晩年にあたる1965年から1967年の録音は、公民権運動の高まりと呼応して、激流の如く変化していきました。

モード奏法の追求から、公民権運動と連動した激情的フリー的演奏、そして、ラヴィ・シャンカールを師と仰ぎ「平和と愛」を探求するスピリチュアルな演奏へ。

さて、「Expression」の収録曲をざっと紹介致します。

1曲目「Ogunde」は、短い幻想的なバラッド。

2曲目「To Be」も幻想的で浮遊感溢れる曲。
コルトレーンのフルートと、ファラオ・サンダースのピッコロが絡んだ後、ピアノソロの後ろで、誰が叩いてるかわからない鈴やボンゴが鳴り響きます。
コルトレーンはフルートの音に声を混ぜ、フルートソロを展開してますね。

3曲目「Offering」は、ややアグレッシブな演奏。
イントロは「A Love Supreme, Pt. 1: Acknowledgement」の変形パターンか。
病魔に冒されたコルトレーンが最後の気力を振り絞り、弱弱しく、テナーを吹こうとしてる様子がありありと思い浮かべられます。

4曲目「Expression」は、自らの昇天を予感しているかのような、清々しい演奏。
延々、激烈な演奏を聴いた耳には、かなりよれよれで弱ってる感じが痛々しいですね。
コルトレーンに続くアリスとサンダースがその分、頑張ってますが・・・。

John Coltrane – Expression (1967)
impulse! A-9120

01. Ogunde (John Coltrane) 3:32
02. To Be (John Coltrane) 16:29

03. Offering (John Coltrane) 8:31
04. Expression (John Coltrane) 10:56

1, 4 –
John Coltrane (ts) Alice Coltrane (p) Jimmy Garrison (b) Rashied Ali (ds)
March 7 & spring 1967 at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, NJ.

2, 3 –
John Coltrane (fl,ts) Pharoah Sanders (piccolo) Alice Coltrane (p)
Jimmy Garrison (b) Rashied Ali (ds)
February 15, 1967 at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, NJ.

このアルバムでは、珍しくフルートを吹いてますが、これ、1964年にヨーロッパで客死した、盟友・エリック・ドルフィー(Eric Dolphy)の遺族から譲渡された遺品だそうです。

<「Expression」に至る過程(抜粋)>

◎1964年12月9日(38歳)「A Love Supreme」1回目のセッション。

◎1965年5月26日、「Transition」1回目のセッション。
◎1965年6月10日、「Transition」2回目、「Kulu Se Mama」1回目のセッション。
◎1965年6月16日、「Kulu Se Mama」2回目のセッション。
◎1965年6月28日(38歳)、「Ascension」レコーディング。
◎1965年10月01日(39歳)「Om」レコーディング。
◎1965年10月14日、「Kulu Se Mama」2回目のセッション。
◎1965年11月23日、「Meditations」レコーディング。

◎1966年7月8∼25日(39歳)日本ツアー

☆1967年2月15日(没年、40歳)遺作「Expression」録音。

◎1967年7月17日(没年、40歳)肝臓癌で昇天(死去)。