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実質、サド・ジョーンズ(Thad Jones)名義のアルバム「The Jones Boys (1957)」

「The Jones Boys」というタイトル通り、「Jones」姓のジャズ奏者をあつめ録音された企画モノですが、演奏を聴けば分かる通り、実質的にはサド・ジョーンズ(Thad Jones)のリーダーアルバムです。

Thad Jones - The Jones Boys (1957) back

「Thad Jones – The Jones Boys (1957)」Fresh Sound Records

しかし、各メンバーの経歴を調べると、カウント・ベイシー(Count Basie)楽団に在籍したり、関わった事のあるメンバーが多いのは、面白いですね。

まずピアニストは、サラ・ヴォーンの伴奏で知られるジミー・ジョーンズ(Jimmy Jones)。

個人的には、クインシーが編曲と指揮を担当したヘレン・メリルのアルバム「Helen Merrill with Clifford Brown (EmArcy MG 36006)」が印象深いですね。

その他、いずれもカウント・ベイシー楽団での活動で知られるベーシストのエディー・ジョーンズ(Eddie Jones)と、ドラマーのジョー・ジョーンズ(“Papa” Jo Jones)

アンサンブルを支えるトランペット奏者として、カウント・ベイシー楽団をはじめ、ビックバンドで活躍したルノー・ジョーンズ(Reunald Jones)

で、最後に忘れちゃいけない、トランペット奏者で作編曲者として有名になる、クインシー・ジョーンズ(Quincy Jones)も参加してますよ。

アルバム全編、サド・ジョーンズの流暢なトランペットをお楽しみいただけるアルバムですが、演奏曲目も「Jones」括りな感じですね。

アップテンポな1曲目「The Jones Bash (ad-lib)」で始まり、クインシー編曲によるスモールコンボ風味のアンサンブルが小気味よい9曲目「ジョーンズ嬢には会ったかい(Have You Met Miss Jones?)」で終わる構成もいいです。

「Jones」括りという勢いだけで作った企画モノの印象が強いアルバムですが、さりげに各メンバーの見せ場を作る小粋な編曲を施したり、曲調もバラエティに富む感じで、何も考えていないようで、結構綿密に作られている、いい意味で予想を裏切ってくれる作品です。

あと個人的には、大好きな作編曲者である「クインシー・ジョーンズ(Quincy Jones)」の、つたないながらも味のあるソロを聴く事が出来る点が重要なポイントだったりします。
トランペッターとしての印象は物凄い薄いですが、あのライオネル・ハンプトン楽団でアート・ファーマー、クリフォード・ブラウンらと一緒に演奏してた訳ですからね。


Thad Jones - The Jones Boys (1957)

Thad Jones – The Jones Boys (1957)
Period ‎SPL-1210 / Fresh Sound FSR-754

01. The Jones Bash (ad-lib) 3:24
02. You Leave Me Breathless (Ralph Freed / Frederick Hollander) 5:43
03. No Other Love (Oscar Hammerstein II / Richard Rodgers) 2:58
04. You’ve Changed (Carl Fischer) 4:32
05. Jones Beach (Quincy Jones) 6:09

06. Montego Bay (Jane Feather) 4:27
07. Blues For The Joneses (Thad Jones) 5:00
08. Salute To The Blue Bird (Thad Jones) 5:19
09. Have You Met Miss Jones? (Lorenz Hart / Richard Rodgers / arr by Q. Jones) 5:17

Thad Jones (tp) Jimmy Jones (p) Eddie Jones (b) Jo Jones (ds)
1, 5, 8,9 – Quincy Jones (flugelhorn) Reunald Jones (tp)
1957 in NYC.

Producer – Leonard Feather
Remastered by Joe Tarantino


しかし、ジョーンズ3兄弟の他の2人、兄であるピアニストのハンク・ジョーンズ(Hank Jones)と、弟でドラマーのエルヴィン・ジョーンズ(Elvin Jones)が参加していないというのもまた、不思議な話ですけど契約上の問題とかあったんでしょうかねえ。

トランペットとピアノの二刀流「曽根麻央 – Infinite Creature」 2018

曽根麻央(そねまお)、1991年生まれなので、現在27歳になるのかな。

幼少期にピアノを演奏、8歳からトランペットも演奏する珍しい『二刀流』ジャズミュージシャンです。

さらに、自ら作編曲を行い、トランペットを吹きつつピアノを弾くという、今までありそでなかったユニークなスタイルの若き逸材です。

曽根さんの現在までの経歴も、驚嘆すべきものがあります。

まず2016年、バークリー音楽大学・修士課程の第1期生として首席で卒業。

2014年の「国際セロニアス・モンク・ジャズ・コンペティション」で、セミファイナリストまで進出。

同2014年「国際トランペット協会・ジャズコンペティション」では、1位優勝・・・と、輝かしい経歴ばかりですね。

曽根麻央 MAO SONÈ「インフィニット・クリーチャー INFINITE CREATURE」- IN THE STUDIO

そんな曽根さんが2018年4月、セルフ・プロデュースによる2枚組デビューアルバム「Infinite Creature」を発売しました。

さらに「アコースティック」、「エレクトリック」でそれぞれ違うメンバーを従えた演奏を聴かせてくれます。

CD帯には、『驚異の二刀流(トランペット+ピアノ)大型新人』というキャッチコピーが書かれてますが、作・編曲も秀でてるんで、二刀流どころの話じゃないですよね、これ。

私が最初に曽根麻央さんの存在を知ったのが、2017年年末にオンエアされた、NHKFMジャズ特番『セッション・トゥナイト』です。

「曽根麻央カルテット“Brightness Of The Lives”」として出演する他、「TRUMPET SUMMIT FOR JAZZ CENTENNIAL」で、トランペット奏者として演奏し、楽曲の編曲も担当しており、マルチな才能に、オーディオ装置の前で唖然としてた記憶があります。

しかし、曽根さんの魅力的な演奏もさることながら、司会担当の児山紀芳さんが、大絶賛してたのが印象的でした。

その時、オンエアされた曲で一番のお気に入りだったのが「Japanama」。

なおアルバム「Infinite Creature」を購入したのは、スタジオ録音版「Japanama」聴きたさであったと、言いきっておきます(笑)

トランペットとピアノの二刀流「曽根麻央 - Infinite Creature」


曽根麻央 – Infinite Creature
Pony Canyon PCCY-30248 [2018.04.18]


曽根麻央 – Infinite Creature [Disc 1] Acoustic

01. Within The Moment 7:48
02. Drunk At The Reception 5:18
03. Recollection(from suite “Expressions On The Melody Of Kokiriko”) 4:41
04. Untitled Allegro 4:59
05. George Washington Bridge Blues 5:47
06. Isfahan (D. Ellington / B. Strayhorn) 5:17
07. From The South 5:29

Acoustic Band
曽根麻央 (tp, p, per, voice) 伊藤勇司 (b) 中道みさき(ds)
山田拓斗 (violin -5,7, mandolin -7) 西方正輝 (cello -2,5)


1枚目、アコーステック・バンドのメンバーは、曽根麻央 (tp, p, per, voice) 伊藤勇司 (b) 中道みさき(ds) 何曲かにバイオリンやチェロが入ります。

若干ラテン風味な「Within The Moment」、酒を飲んでやっちまった失敗体験を曲にした「Drunk At The Reception」。

アルバム・バージョンでは、パット・メセニーバンドを彷彿させるヴォイスが混じる組曲「コキリコの調べにおける表現」から「Recollection」。

静と動、そして緩急ついた印象的な「Untitled Allegro」。

セカンドライン (second line)ビートで始まる「George Washington Bridge Blues」。途中、ストリングスが絡むことで、さらなる緊張感が生み出されております。

気だるい雰囲気漂う「Isfahan」は、デューク・エリントン作曲なんですね。

沖縄旋律とブルースを融合させたような「From The South」は、不思議な浮遊感漂う、かつてない曲調の「和ジャズ」かと。

トランペットとピアノの二刀流「曽根麻央 - Infinite Creature」


曽根麻央 – Infinite Creature [Disc 2] Electric

01. Beyond Gravitation 6:04
02. SkyFloor 8:26
03. Introducing #BotLives 3:46
04. Brightness Of The Lives 5:38
05. I Fall In Love Too Easily (J. Styne / S. Cahn) 6:12
06. A Letter 4:18
07. Japanama 8:06

Electric Band
曽根麻央 (tp, flh, p, syn, per, voice) 井上銘 (el-g) 山本連(el-b) 木村紘(ds)


2枚目、エレクトリック・バンドのメンバーは、
曽根麻央 (tp, flh, p, syn, per, voice) 井上銘 (el-g) 山本連(el-b) 木村紘(ds)

80年代マイルスバンドのドラマー、アル・フォスターが叩き出すリズムを彷彿とさせるドラムから始まる、軽快な「Beyond Gravitation」。

ここでの曽根麻央奏でるトランペットは、師匠であるタイガー大越さんのテイストを濃密なまでに、感じさせますね。

バラッド風なイントロで始まる「SkyFloor」。これも私が好きなタイガー大越さんテイストだなあ(笑)。

「Introducing #BotLives」~「Brightness Of The Lives」は、曽根麻央カルテットのテーマソングなんだとか。

フリー・インプロビゼーションを挟んで、「和ジャズ」なテーマメロディが登場。

ハードなドラミングに和なテーマというと、井上鑑さんとか、難波弘之さんの路線を思い出します。

スタンダードナンバーである「I Fall In Love Too Easily」は何故か、マイルス・デイヴィス・バンドの『アガルタ(Agharta)』収録の「麗しのマイシャ」を彷彿とさせるアレンジで演奏されます。

バラッドの「A Letter」は、亡くなった母方の祖母に捧げた曲とのこと。

私のお目当て「Japanama」は、「From The South」の姉妹曲なんだとか。曲名は「Japan」と「Panama」を組み合わせた造語だそうです。

日本とパナマを融合したタイトル通り「和」なテイストと、「ラテン風」なグルーブが混ざり合う摩訶不思議な演奏です。