混沌たる「Ascension(神の国)」及び「Om(阿吽)」の前後に録音されたのが、今回ご紹介する、静寂と安らぎ溢れるアルバム「Kulu Se Mama」です。
アフリカ伝来のサム・ピアノ(親指ピアノ)をつま弾く音を導入したり、「Om(阿吽)」を詠唱したりと、ジャズから逸脱した、混沌極めるアルバム「Om(阿吽)」を録音したコルトレーン(生存時は未発表)。
ライブでラヴィ・シャンカール(Ravi Shankar)に「Om(阿吽)」を披露し、「(静寂(シャンティ)」と「安らぎ」が不足している事をたしなめられたためか、アルバム「Kulu Se Mama」には神秘性というか、「静寂と安らぎ」が加わってるように思えます。
表題曲「Kulu Se Mama」は、パーカッションとボーカルで参加するジュノ・ルイスの作品。
母に捧げた賛歌なんだそうですが、「アフリカ回帰」を目指した曲調で、ゆるめなパーカッションの音色とアフリカの現地語の歌がブレンドされた、「土の香り漂う」ような、穏やかなる曲です。
蛇足ですがこの曲、アート・ブレイキーがブルーノートに録音した、
「Art Blakey – Orgy in Rhythm (Blue Note)1957」、
「Art Blakey – Holiday for Skins (Blue Note)1958」、
「Art Blakey – The African Beat (Blue Note)1962」と続く、
アフリカ回帰的なドラムアンサンブルの作品群に、傾向が近い感じがします。
続く2曲目「Vigil」は、テナーサックスのコルトレーンと、ドラムスのエルヴィンによるデュオ。
9分半にも渡り、2人だけの丁々発止なやりとりが続きます。
3曲目「Welcome」は、穏やかなるバラッド風な演奏。これこそ「静寂と安らぎ」ですね。
1975年にマイケル・カスクーナ(Michael Coscuna)が編纂したコンピレーションアルバム「The Gentle Side Of John Coltrane」にも収録されてます。
John Coltrane – Kulu Se Mama (1965)
impulse! A-9106
01. Kulu Se Mama (Juno Se Mama) (Julian Lewis) 18:50
02. Vigil (John Coltrane) 9:51
03. Welcome (John Coltrane) 5:34
03. Welcome –
John Coltrane(ts) McCoy Tyner(p) Jimmy Garrison(b) Elvin Jones(ds)
June 10, 1965 at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, NJ.
02. Vigil –
John Coltrane(ss, ts) Elvin Jones(ds)
June 16, 1965 at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, NJ,
01. Kulu Se Mama (Juno Se Mama) –
John Coltrane(ts) Pharoah Sanders(ts) McCoy Tyner(p)
Jimmy Garrison(b) Donald Garrett(b, bass-cl) Frank Butler(ds) Elvin Jones(ds)
Juno Lewis (vo, per)
Western Recorders, Los Angeles, CA, October 14, 1965
<「Kulu Se Mama」録音の頃(抜粋)>
☆1964年12月9日(38歳)「A Love Supreme」1回目のセッション。
◎1965年6月10&16日(38歳)、「Kulu Se Mama」1回目のセッション。
◎1965年6月28日、「Ascension」レコーディング。
◎1965年10月01日(39歳)「Om」レコーディング。
☆1965年10月14日、「Kulu Se Mama」2回目のセッション。
◎1965年11月23日、「Meditations」レコーディング。
◎1966年7月8∼25日(39歳)日本ツアー
◎1967年2月15日(没年、40歳)遺作「Expression」1回目のセッション。
◎1967年7月17日(没年、40歳)肝臓癌で昇天(死去)。