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生粋のビバップピアニスト!「甲田まひる – PLANKTON (three blind mice) 」

甲田まひる、2001年5月24日生まれ。2018年現在で若干17歳(若いなあ)。

小学6年生で始めたインスタグラムをきっかけに、ファッショニスタ(fashionista)として注目され現在、ファッション誌の連載やモデルとしても活躍。

※なお、ファッショニスタ(fashionista)とは、「ファッションの動向・流行に敏感な人」という意味だそうです。

2017年から東京都内のライブハウスを中心に、ジャズ・ピアニストとしての活動を開始した甲田まひるさん。
彼女はモダンジャズ界の巨人で、バップピアノの第1人者「バド・パウエル(Bud Powell)」を、敬愛しているとのこと。

そんな、バド・パウエルを頂点とするビバップ・スタイルで弾き倒した演奏を充分堪能出来るのが、2018年5月発売となったメジャーデビュー・アルバム「PLANKTON」です。

甲田まひる - PLANKTON (three blind mice)

まずは、1曲目のバド・パウエル作「Un Poco Loco」と、2曲目の「Cleopatra’s Dream」を(出来れば)続けて聴いて欲しいです。
SONYさんの公式動画が公開されているようなので、貼っておきます。

ビバップスタイルのピアニストをこよなく愛する方であれば、彼女のバド・パウエルへの熱い思いが、ひしひしと伝わってくるはず。

「なーんだ、バドの完全コピーじゃん!」と思った方、日本いや世界中でこれだけ完璧なまでに、バドの鬼気迫る演奏を再現出来た録音ありました?
・・・少なくとも、私は聴いたことがないです。

そういう意味では、ドラムやピアノの音を、現代のスタジオで、当時の荒々しくも気迫溢れる音に、限りなく似せてしまった録音技師の方も、相当なものだと思います。

「Un Poco Loco」における若手ジャズドラマーの筆頭格・石若駿の、あのリズムパターン再現度には、絶句するしかありませんね・・・。

よくぞここまで、再現出来たものだと・・・。

他曲も、バド・パウエルが多用するフレーズがばんばん飛び出します。個人的には「Celia」と、「Tempus Fugit」あたりが好みかなあ。

バップ時代の生き証人、現在は指導者として世界中のミュージシャンから敬愛される「バリー・ハリス(Barry Harris)」を意識してか、タッド・ダメロンの「Lady Bird」が収録されているのも個人的にはツボですが・・・。

バドが演奏した有名曲の他、バドを兄弟のように庇護していたセロニアス・モンク(Thlonious Monk)の「Ruby My Dear」、「Ask Me Now」が入ってるのは、流石、バドの事を良く分かってるというか・・・。

「Plankton」と「My Crush」は、甲田まひる自身のオリジナル楽曲。

軽快な「Plankton」の第一印象は、いかにもバド・パウエル派のピアニストが作った楽曲だなあ・・・という感じ。

「My Crush」は、ドラムンベース(Drum & Bass)風のコラージュ的な楽曲。8ビートのリズムパターンに乗せ、録音音源を編集したような演奏が、繰り広げられます。


甲田まひる - PLANKTON (three blind mice)

甲田まひる – PLANKTON (2018)
three blind mice / Sony Music Direct MHCL-2755 [2018.05.23]

甲田まひる (p) 新井和輝 (b) 石若駿 (ds)
Februay, 2018 at Sound City Setagaya Studio.

01. Un Poco Loco (Bud Powell) 5:23
02. Cleopatra’s Dream (Bud Powell) 3:38
03. Indiana [take 1] (James F. Hanley / Ballard McDonald) 2:46
04. Indiana [take 3] (James F. Hanley / Ballard McDonald) 2:26
05. Ruby My Dear (Thelonious Monk) 5:59
06. Plankton (甲田まひる) 4:51

07. Celia (Bud Powell) 4:43
08. Tempus Fugit (Bud Powell) 2:56
09. Lady Bird (Tadd Dameron) 4:43
10. Lament (J. J. Johnson) 5:28
11. Ask Me Now (Thelonious Monk) 4:44
12. My Crush (甲田まひる) 2:39


<バド・パウエル(Bud Powell)によるオリジナル録音>

「Un Poco Loco」
「The Amazing Bud Powell, Volume 1 (Blue Note BLP 1503)」に収録

「Cleopatra’s Dream」
「The Amazing Bud Powell, Vol. 5 – The Scene Changes (Blue Note BLP 4009)」に収録。

「Indiana」
「The Bud Powell Trio (Roost RLP 2224)」に収録

「Tempus Fugit」、「Celia」
「Bud Powell – Jazz Giant (Norgran MGN 1063)」に収録

「Ruby, My Dear」
「Bud Powell – A Portrait Of Thelonious (Columbia CL 2292)」に収録

「Lady Bird」
「Piano Interpretations By Bud Powell (Norgran MGN 1077)」に収録


モンク歓喜の演奏 – コンプリート・ラスト・ロンドン・レコーディングス – Thelonious Monk [Black Lion/Muzak] (2018)

1月25日にセロニアス・モンクのリーダー作として最後の録音となる「The London Collection」が、日本のインディーレーベル(?)・「MUZAK(ミューザック) 」さんから、発売されました。

コンプリート・ラスト・ロンドン・レコーディングス
※ジャケット写真をリンクすると、アマゾンさんで商品購入出来ます。

ジャケットと特典ポスターは、ジャズ喫茶「DUG」のオーナーで写真家の中平穂積氏の作品です。

「特典ポスターがある!」との情報を聞きつけ、私は『タワーレコード新潟店(イオンモール新潟南内)』で購入。

The London Collection - Thelonious Monk (2018)

何らかの手違いで、CDと共に到着したはずの「特典ポスター」の存在が、お店で不明となり、店舗で「有無」の確認をお願いして、再訪した際にようやくポスター付きで購入出来ました。

今回のアルバムは2枚組。

1枚目が「ソロ」、2枚目がアート・ブレイキー(ds)とアル・マッキボン(b)を従えたトリオによる演奏です。

なお2枚目の最後にボーナス・トラックとして、ソロで演奏された「Trinkle, Tinkle [take 1] 」が、追加収録されております。

録音したスタジオ設備の関係か、何時もゴツゴツした感じの印象があるモンクのピアノの響きが、物凄く綺麗に響き渡ります。

例えて書くなら『広い空間にピアノ1台だけ置いてある天国で、ピアノを弾いてるモンク』といった印象かな。

トリオによる演奏も同様で、いつも豪快なアード・ブレイキーのドラムが、かなり大人しく(繊細に)聴こえてしましいます。

ただ、ソロ、トリオとも、ピアノの響きに「モンクの歓喜(喜び)」を感じとることが出来ます。

音だけ聴いてる限り、かなり高揚(ハイになって)して演奏してる事が、音の響きから伺えますね。

いつもムッツリした感じした印象を受けるモンクを、ここまでウキウキさせた原因が何かは分かりませんが、モンク自作の「Trinkle, Tinkle(ブギウギ調の曲)」などを聴いていると、こちらの気持ちもウキウキしてきます。

演奏曲目には、モンク珠玉の自作曲が、ずらっと並びます。

初期に録音した楽曲が多い感じがするのは、ブルーノート(Blue Note Records)やプレステッジ(Prestige Records)などの初期録音で共演した、アート・ブレイキー(Art Blakey)が居たからでしょうねえ。

なお、何曲かのテイクで、「ピアノを擦るような音」が聴こえてきますが、これはモンクの「伸び過ぎた爪」が、鍵盤に触れた際に発生してる音だとか。
何曲か録音した後、同行したモンクの奥様(ネリーさん)が爪を切ってあげることで、対処したとのことです。

ブラック・ライオン・レーベルは、今まで日本のレコード店にてお目にかかる機会が少なく、このアルバム自体もこれまで、まったく私の視野に入っていませんでしたが、今回の再発は、本当に嬉しい「出合い」でした。

再発に尽力され、特典ポスターまで用意してくれた「MUZAK(ミューザック) 」さんに、感謝を。


コンプリート・ラスト・ロンドン・レコーディングス – セロニアス・モンク
The London Collection – Thelonious Monk (2018)
Black Lion/Muzak MZCB-1365/66 [2018.01.25]

Producer Alan Bates
Photography by Hozumi Nakadaira
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The London Collection [Disc 1]

01. Trinkle, Tinkle [take 3] 7:23
02. Crepuscule With Nellie [take 2] 2:15
03. Darn That Dream (De Lange, Van Heusen) 5:45
04. Little Rootie Tootie 4:04
05. Meet Me Tonight In Dreamland (Whitson, Friedman) 3:12
06. Nice Work If You Can Get It (G & I Gershwin) 5:10
07. My Melancholy Baby (Washington) 5:08
08. Jackie-Ing 3:26
09. Loverman (Ramirez) 7:12
10. Blue Sphere 2:24
11. Trinkle, Tinkle [take 2] 5:55
12. The Man I Love (G & I Gershwin) 5:12
13. Something In Blue 6:38
14. Introspection [take 1] 1:11
15. Chordially (Improvisation) 9:40

Thelonious Monk (p)
November 15, 1971 at Chappell Studios, London.

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The London Collection [Disc 2]

01. Evidence [take 2] 5:24
02. Misterioso 6:22
03. Crepuscule With Nellie [take 4] 2:20
04. I Mean You 7:43
05. Criss Cross 3:40
06. Ruby My Dear 6:04
07. Nutty [take 2] 4:43
08. Hackensack [take 2] 7:54
09. Crepuscule With Nellie [take 3] 2:19
10. Nutty [take 1] 4:13
11. Introspection [take 3] 3:05
12. Hackensack [take 1] 9:04
13. Evidence [take 1] 7:06

[bonus track]
14. Trinkle, Tinkle [take 1] 5:52

Thelonious Monk (p) Al McKibbon (b) Art Blakey (ds)
November 15, 1971 at Chappell Studios, London.


なお、この録音のきっかけとなった「ジャイアンツ・オブ・ジャズ」という特別編成バンドは、1971年秋から演奏活動をスタートし、アメリカ、ヨーロッパ、日本と全世界を巡業していたようです。

Thelonious Monk, Dizzy Gillespie, Giants Of Jazz Copenhagen 1971

01. Round Midnight (Thelonious Monk)
02. Tour De Force (Dizzy Gillespie)
03. Lover Man (J. Davis-J. Sherman-R. Ramrez)
04. Tin Tin Deo (Gil Fuller-Chano Pozo)
05. Everything Happens To Me (Tom Adair-Matt Dennis)
06. A Night In Tunisia (Dizzy Gillespie)

Dizzy Gillespie(tp) Sonny Stitt(as) Kai Windin(tb)
Thelonious Monk(p) Al McKibbon(b) Art Blakey(ds)
Live at Tivoli Gardens,Copenhagen,Denmark,November 9,1971


では、今回のアルバムご紹介はここまで。