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トランペットとピアノの二刀流「曽根麻央 – Infinite Creature」 2018

曽根麻央(そねまお)、1991年生まれなので、現在27歳になるのかな。

幼少期にピアノを演奏、8歳からトランペットも演奏する珍しい『二刀流』ジャズミュージシャンです。

さらに、自ら作編曲を行い、トランペットを吹きつつピアノを弾くという、今までありそでなかったユニークなスタイルの若き逸材です。

曽根さんの現在までの経歴も、驚嘆すべきものがあります。

まず2016年、バークリー音楽大学・修士課程の第1期生として首席で卒業。

2014年の「国際セロニアス・モンク・ジャズ・コンペティション」で、セミファイナリストまで進出。

同2014年「国際トランペット協会・ジャズコンペティション」では、1位優勝・・・と、輝かしい経歴ばかりですね。

曽根麻央 MAO SONÈ「インフィニット・クリーチャー INFINITE CREATURE」- IN THE STUDIO

そんな曽根さんが2018年4月、セルフ・プロデュースによる2枚組デビューアルバム「Infinite Creature」を発売しました。

さらに「アコースティック」、「エレクトリック」でそれぞれ違うメンバーを従えた演奏を聴かせてくれます。

CD帯には、『驚異の二刀流(トランペット+ピアノ)大型新人』というキャッチコピーが書かれてますが、作・編曲も秀でてるんで、二刀流どころの話じゃないですよね、これ。

私が最初に曽根麻央さんの存在を知ったのが、2017年年末にオンエアされた、NHKFMジャズ特番『セッション・トゥナイト』です。

「曽根麻央カルテット“Brightness Of The Lives”」として出演する他、「TRUMPET SUMMIT FOR JAZZ CENTENNIAL」で、トランペット奏者として演奏し、楽曲の編曲も担当しており、マルチな才能に、オーディオ装置の前で唖然としてた記憶があります。

しかし、曽根さんの魅力的な演奏もさることながら、司会担当の児山紀芳さんが、大絶賛してたのが印象的でした。

その時、オンエアされた曲で一番のお気に入りだったのが「Japanama」。

なおアルバム「Infinite Creature」を購入したのは、スタジオ録音版「Japanama」聴きたさであったと、言いきっておきます(笑)

トランペットとピアノの二刀流「曽根麻央 - Infinite Creature」


曽根麻央 – Infinite Creature
Pony Canyon PCCY-30248 [2018.04.18]


曽根麻央 – Infinite Creature [Disc 1] Acoustic

01. Within The Moment 7:48
02. Drunk At The Reception 5:18
03. Recollection(from suite “Expressions On The Melody Of Kokiriko”) 4:41
04. Untitled Allegro 4:59
05. George Washington Bridge Blues 5:47
06. Isfahan (D. Ellington / B. Strayhorn) 5:17
07. From The South 5:29

Acoustic Band
曽根麻央 (tp, p, per, voice) 伊藤勇司 (b) 中道みさき(ds)
山田拓斗 (violin -5,7, mandolin -7) 西方正輝 (cello -2,5)


1枚目、アコーステック・バンドのメンバーは、曽根麻央 (tp, p, per, voice) 伊藤勇司 (b) 中道みさき(ds) 何曲かにバイオリンやチェロが入ります。

若干ラテン風味な「Within The Moment」、酒を飲んでやっちまった失敗体験を曲にした「Drunk At The Reception」。

アルバム・バージョンでは、パット・メセニーバンドを彷彿させるヴォイスが混じる組曲「コキリコの調べにおける表現」から「Recollection」。

静と動、そして緩急ついた印象的な「Untitled Allegro」。

セカンドライン (second line)ビートで始まる「George Washington Bridge Blues」。途中、ストリングスが絡むことで、さらなる緊張感が生み出されております。

気だるい雰囲気漂う「Isfahan」は、デューク・エリントン作曲なんですね。

沖縄旋律とブルースを融合させたような「From The South」は、不思議な浮遊感漂う、かつてない曲調の「和ジャズ」かと。

トランペットとピアノの二刀流「曽根麻央 - Infinite Creature」


曽根麻央 – Infinite Creature [Disc 2] Electric

01. Beyond Gravitation 6:04
02. SkyFloor 8:26
03. Introducing #BotLives 3:46
04. Brightness Of The Lives 5:38
05. I Fall In Love Too Easily (J. Styne / S. Cahn) 6:12
06. A Letter 4:18
07. Japanama 8:06

Electric Band
曽根麻央 (tp, flh, p, syn, per, voice) 井上銘 (el-g) 山本連(el-b) 木村紘(ds)


2枚目、エレクトリック・バンドのメンバーは、
曽根麻央 (tp, flh, p, syn, per, voice) 井上銘 (el-g) 山本連(el-b) 木村紘(ds)

80年代マイルスバンドのドラマー、アル・フォスターが叩き出すリズムを彷彿とさせるドラムから始まる、軽快な「Beyond Gravitation」。

ここでの曽根麻央奏でるトランペットは、師匠であるタイガー大越さんのテイストを濃密なまでに、感じさせますね。

バラッド風なイントロで始まる「SkyFloor」。これも私が好きなタイガー大越さんテイストだなあ(笑)。

「Introducing #BotLives」~「Brightness Of The Lives」は、曽根麻央カルテットのテーマソングなんだとか。

フリー・インプロビゼーションを挟んで、「和ジャズ」なテーマメロディが登場。

ハードなドラミングに和なテーマというと、井上鑑さんとか、難波弘之さんの路線を思い出します。

スタンダードナンバーである「I Fall In Love Too Easily」は何故か、マイルス・デイヴィス・バンドの『アガルタ(Agharta)』収録の「麗しのマイシャ」を彷彿とさせるアレンジで演奏されます。

バラッドの「A Letter」は、亡くなった母方の祖母に捧げた曲とのこと。

私のお目当て「Japanama」は、「From The South」の姉妹曲なんだとか。曲名は「Japan」と「Panama」を組み合わせた造語だそうです。

日本とパナマを融合したタイトル通り「和」なテイストと、「ラテン風」なグルーブが混ざり合う摩訶不思議な演奏です。


生粋のビバップピアニスト!「甲田まひる – PLANKTON (three blind mice) 」

甲田まひる、2001年5月24日生まれ。2018年現在で若干17歳(若いなあ)。

小学6年生で始めたインスタグラムをきっかけに、ファッショニスタ(fashionista)として注目され現在、ファッション誌の連載やモデルとしても活躍。

※なお、ファッショニスタ(fashionista)とは、「ファッションの動向・流行に敏感な人」という意味だそうです。

2017年から東京都内のライブハウスを中心に、ジャズ・ピアニストとしての活動を開始した甲田まひるさん。
彼女はモダンジャズ界の巨人で、バップピアノの第1人者「バド・パウエル(Bud Powell)」を、敬愛しているとのこと。

そんな、バド・パウエルを頂点とするビバップ・スタイルで弾き倒した演奏を充分堪能出来るのが、2018年5月発売となったメジャーデビュー・アルバム「PLANKTON」です。

甲田まひる - PLANKTON (three blind mice)

まずは、1曲目のバド・パウエル作「Un Poco Loco」と、2曲目の「Cleopatra’s Dream」を(出来れば)続けて聴いて欲しいです。
SONYさんの公式動画が公開されているようなので、貼っておきます。

ビバップスタイルのピアニストをこよなく愛する方であれば、彼女のバド・パウエルへの熱い思いが、ひしひしと伝わってくるはず。

「なーんだ、バドの完全コピーじゃん!」と思った方、日本いや世界中でこれだけ完璧なまでに、バドの鬼気迫る演奏を再現出来た録音ありました?
・・・少なくとも、私は聴いたことがないです。

そういう意味では、ドラムやピアノの音を、現代のスタジオで、当時の荒々しくも気迫溢れる音に、限りなく似せてしまった録音技師の方も、相当なものだと思います。

「Un Poco Loco」における若手ジャズドラマーの筆頭格・石若駿の、あのリズムパターン再現度には、絶句するしかありませんね・・・。

よくぞここまで、再現出来たものだと・・・。

他曲も、バド・パウエルが多用するフレーズがばんばん飛び出します。個人的には「Celia」と、「Tempus Fugit」あたりが好みかなあ。

バップ時代の生き証人、現在は指導者として世界中のミュージシャンから敬愛される「バリー・ハリス(Barry Harris)」を意識してか、タッド・ダメロンの「Lady Bird」が収録されているのも個人的にはツボですが・・・。

バドが演奏した有名曲の他、バドを兄弟のように庇護していたセロニアス・モンク(Thlonious Monk)の「Ruby My Dear」、「Ask Me Now」が入ってるのは、流石、バドの事を良く分かってるというか・・・。

「Plankton」と「My Crush」は、甲田まひる自身のオリジナル楽曲。

軽快な「Plankton」の第一印象は、いかにもバド・パウエル派のピアニストが作った楽曲だなあ・・・という感じ。

「My Crush」は、ドラムンベース(Drum & Bass)風のコラージュ的な楽曲。8ビートのリズムパターンに乗せ、録音音源を編集したような演奏が、繰り広げられます。


甲田まひる - PLANKTON (three blind mice)

甲田まひる – PLANKTON (2018)
three blind mice / Sony Music Direct MHCL-2755 [2018.05.23]

甲田まひる (p) 新井和輝 (b) 石若駿 (ds)
Februay, 2018 at Sound City Setagaya Studio.

01. Un Poco Loco (Bud Powell) 5:23
02. Cleopatra’s Dream (Bud Powell) 3:38
03. Indiana [take 1] (James F. Hanley / Ballard McDonald) 2:46
04. Indiana [take 3] (James F. Hanley / Ballard McDonald) 2:26
05. Ruby My Dear (Thelonious Monk) 5:59
06. Plankton (甲田まひる) 4:51

07. Celia (Bud Powell) 4:43
08. Tempus Fugit (Bud Powell) 2:56
09. Lady Bird (Tadd Dameron) 4:43
10. Lament (J. J. Johnson) 5:28
11. Ask Me Now (Thelonious Monk) 4:44
12. My Crush (甲田まひる) 2:39


<バド・パウエル(Bud Powell)によるオリジナル録音>

「Un Poco Loco」
「The Amazing Bud Powell, Volume 1 (Blue Note BLP 1503)」に収録

「Cleopatra’s Dream」
「The Amazing Bud Powell, Vol. 5 – The Scene Changes (Blue Note BLP 4009)」に収録。

「Indiana」
「The Bud Powell Trio (Roost RLP 2224)」に収録

「Tempus Fugit」、「Celia」
「Bud Powell – Jazz Giant (Norgran MGN 1063)」に収録

「Ruby, My Dear」
「Bud Powell – A Portrait Of Thelonious (Columbia CL 2292)」に収録

「Lady Bird」
「Piano Interpretations By Bud Powell (Norgran MGN 1077)」に収録